世の中にはたくさんの革製品があるけれど、いったい何が違うんだろう?
タンニン鞣しにクロム鞣し、牛革、馬革、ウナギ革、
オイルドレザーにプルアップ、ヌメ革の違いってなんなんだ?
今回は、ハレルヤで取り扱っている革の特徴をご紹介したいと思います。
タンニン鞣しとは
私たちが手にする「革」とは、元をたどれば食用牛の「皮」が大部分を占めています。
日本では、なめす前の状態を「皮」、なめした後の状態を「革」と区別していますが、
革を柔らかくすると書いて「鞣す」というこの行為は、
そのままでは腐敗し、乾燥させれば硬くなりすぎる「皮」を、
安定して長期間使えるようにと人類が編み出した加工技術の一つです。
現代においては主に化学薬品を使った「クロム鞣し」と、
植物のタンニンを使った「タンニン鞣し」がよく知られています。
緑茶や渋柿にも含まれているということでなじみ深い成分の一つではないでしょうか。
タンパク質と結合し、革が腐敗するのを防ぎますが、日焼けをしやすくなるという性質も持っています。
革製品を使い続けると色が変化するというのは、タンニンのこの性質が影響しています。
一方でクロム鞣しにはそういった性質が無いため、革製品を変色させずに持ち続けることができます。
これから紹介するレザーは、全てタンニンで鞣しています。
プルアップレザー
ハレルヤといえばこちらのレザー、
国内外のクラウドファンディングで6000万円を調達した整理整頓財布「TIDY」や、
TIDYが誕生するまで、ハレルヤを支えたオールレザー長財布「Hallelujah」など、たくさんの商品に使用されています。
プルアップレザーとは、オイルを含ませているオイルドレザーの中でも革の芯までオイルを染み込ませているもので、
指で押したり曲げたり(プルアップ)すると中の染料がオイルごと移動し、表面に色の濃淡が出来上がります。
ハレルヤのプルアップレザーはタンニン鞣しです。
加工の際に表面をやや起毛させているため、タンニンによる色の変化に加え、
起毛が寝ることによる艶感の変化も楽しむことができるようになっています。
また、オイルが既に含まれているのでヌメ革よりも耐水性があり、
ちょっとした擦り傷程度なら指でこすることによって、中のオイルが移動して目立たなくなります。
エイジングする革の中ではお手入れも簡単で扱いやすく、変化の醍醐味を楽しめる革ではないでしょうか。
ハレルヤのプルアップレザーは牛革を使用しています。
同じ牛革でも背側か腹側かで柔らかさが異なり、傷やシボといったナチュラルスタンプがあることも。
一つ一つの革に個性があり、また、持つ人に合わせて変化する唯一無二のレザーです。
栃木レザー
日本を代表するタンナーの1つである栃木レザー。
日本でも数少ない、ピット製法による植物タンニン鞣しを行っているタンナーです。
栃木県で作られる革が栃木レザーなのかなと思いがちですが、
栃木レザー自体が1つのタンナー(製革業者)の名前であり、築き上げてきたブランドでもあります。
原皮の状態の皮を仕入れ、約20の工程を数か月かけることで完成する栃木レザーは、
タンニン鞣しの中でも、手間暇のかかる「ピット製法」という伝統的な製法で作られます。
160ものピット(水槽)に革を順番に漬け込むので、完成まで数か月かかる製法ではありますが、
より普及している「ドラム製法」に比べると革へのダメージも少なく、
また、じっくり漬けることでタンニンが革の芯まで染み込み、堅牢なレザーに仕上がります。
ハレルヤで扱う栃木レザーは全6色。
「革の個性」を楽しめるよう丁寧に鞣された革は、どれも長期にわたってお使いいただけます。
ブエブロレザー
プエブロレザーに名前が似ていますが、こちらは姫路のタンナーが作り上げた馬革のプルアップレザーです。
馬革は牛革に比べて薄くて軽く、また同じ厚みだった場合は強度でも勝ります。
ですが、馬は牛に比べて生きていた時の傷が多いため、革の均一性を求められる場面では使える部位が限られてくる一面もあります。
こちらのレザーはそういった生前の傷も革の個性とし、「味」として楽しめるように作られています。
革を染色し、オイルと共に蝋(ロウ)を用いて加工を行うと、
オイルによってプルアップ効果が生まれ、ロウワックスによって表面に光沢が出るようになります。
使いはじめはプルアップ効果とロウワックスの光沢感、
使い続けるとエイジングによる色味の変化と、ロウワックスと油分が馴染んだ艶感を楽しめる革です。
ベジタブルタンニンレザー
Mollisシリーズのリュックやがま口長財布、ベルトに使われている革です。
ベジタブルタンニンは美味しそうな名前をしていますが、日本語では植物タンニン鞣しと訳される言葉です。
ハレルヤで取り扱っている他のレザーも、ほとんどが植物タンニン鞣しを用いられていますが、
こちらの革は、「空打ち」という手法によって表れるシボ(ちりめん状のシワ模様)と、
繊維がほぐれたことによる柔らかく、くったりとした手触りが特徴です。
「シボ」は革に元々ある模様ではなく、「空打ち」や「シュリンク」「型押し」といった加工を行うことで、表すことができる表情の一つです。
表面にシボができることで、傷がつきにくく目立ちにくくなるメリットがあります。
「シュリンク」は薬剤、「型押し」はプレス加工、そして「空打ち」は回転ドラムに革を入れて撹拌することでそれぞれシボを生じさせます。
空打ちでできたシボの大きな特徴は均一ではないこと。
革の繊維の密度によって、シボが粗く細かく不規則に表れます。
奥の深い革の世界
今回はハレルヤで扱っているタンニン鞣しの革のご紹介でした。
タンニン鞣しともう一つ、有名な方法として「クロム鞣し」を挙げましたが、
クロム鞣しは、タンニン鞣しよりも短時間でたくさんの皮を鞣すことができるため、
現在では生産される革の8割がクロム鞣しといわれています。
タンニン鞣しよりも柔らかく、自由度の高い加工ができるので、
これが革?といった製品ができるのもクロム鞣しの特徴です。
次回は「クロム鞣し」で作られた革をご紹介予定です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。