「雨の日でも革のバッグや革財布を使いたい。」「梅雨になる前に防水対策がしたい。」そんな時に防水スプレーを使う方が多いかと思いますが、ワセリンにも防水効果があることをご存知でしたでしょうか?
防水スプレーと比べてワセリンの方が安く身近な薬局で手に入るので、代用できれば嬉しいですよね。今回は、「防水スプレーVSワセリン!ワセリンは防水スプレーの代用品として使えるのか?」を検証していきます。
これから革小物の防水加工をしたいと考えている方の参考になれば幸いです。
検証使用アイテムの紹介
検証には、HAWKINSの防水スプレー(フッ素系)とユニリーバのヴァセリンで効果を比較します。
革小物には、Hallelujahで扱っている4つの革小物を使用します。すべて革の種類が異なっています。※すべて6ヶ月ほど使用
- 牛革 栃木レザー VONO ANILINE 「Moldi」
- 牛革 Molis ベジタブルタンニンレザー ペンケース Mサイズ
- 馬革 LEAP ブエブロレザー L字コインケース
- 牛革 プルアップレザー 「TIDY2.0」
ワセリンについて
ワセリンを使ったことはあるけれど意外と細かな情報まで知らない方も多いのではないでしょうか。まずは、ワセリンについて説明していきます。
「ワセリン」と「ヴァセリン」の違い
「ワセリン」…安全性と保存性が高い石油を精製してつくられている。薬の原材料として医療現場で使用されることも。植物性の油と違い脂肪酸を含まないため、酸化しにくく長期間使用することができるところが魅力。
「ヴァセリン」…ユニリーバ社の商品名。1870年の誕生以来、防腐剤無添加・無着色・無香料で、全身に使える保湿アイテムとして世界90か国以上で展開。化粧品売り場で販売されている。
出典 ワセリン?ヴァセリン?知ってるようで知らないふたつの違いって?
「ワセリン」は原料名で、「ヴァセリン」はワセリンを配合したユリーバ社の商品名です。
「ワセリン」とは?
ワセリンは、皮膚の保湿に効果的な保湿剤です。保湿剤といっても、ワセリン自体に皮膚に水分を与える力はなく、皮膚をコーティングすることで皮膚から水分が失われるのを防ぐために使われます。 …ワセリンは、石油由来の炭化水素類の混合物を脱色して精製したものです。
出典「【薬剤師監修】ワセリンにはどんな効果があるの?おすすめ&NGな使い方とは」
薬局で購入できる肌の保湿用のワセリンですが、石油由来で油分が多いため革に塗ると撥水効果を発揮します。
おすすめのワセリン配合商品は?
ユニリーバ社の「ヴァセリン」
今回は、ユニリーバ社のヴァセリンを使用しました。成分にワセリンが配合されています。また、防腐剤無添加、無着色、無香料、低刺激処方なので、肌にも革にも安心してお使いいただけます。
ワセリンの革製品への使い方
- ブラシで汚れを落とす
- ワセリンを少量とり、薄く塗る
- 塗りすぎた時は、クロスや綿の布で馴染ませてください
ワセリンを重ねた時の撥水効果は?
ワセリンを使う際に注意したいのは、塗り重ねる回数が多いほどに革の色が濃くなる点です。上記の画像は、ワセリンをずらしながら重ねて、水滴を滴下した直後の写真です。一度塗るだけで撥水効果が得られています。色の変化を見て、お好みで止めましょう。
防水スプレーについて
種類が2つある?
今回使用したのは、HAWKINSの防水スプレー(フッ素系)です。革用の防水スプレーは、「シリコン系」と「フッ素系」に分けられます。今回は革製品との相性の良い「フッ素系」の防水スプレーを使いました。
それぞれに下記のような特徴があります。
シリコン系:革製品との相性△
革の表面に皮膜のバリアを作って、水を侵入させないようにするタイプが、シリコン系防水スプレーです。効果がすぐに得られますが、皮膜が革本来の通気性を悪くさせてしまいます。…レインウェア、傘、雨靴に使用すると効果的ですが、革製品との相性はあまり良くありません。
出典「雨の日を快適に。防水スプレーお手入れ特集 」
フッ素系:革製品との相性○
水の分子よりもさらに微細なフッ素樹脂を、革の繊維に付着・浸透させ、防水効果を得ることができます。革の通気性を損なわず柔軟性をキープしてくれるので、スプレーによる革の劣化が起きにくいです。
…デメリットとしては、あくまでフッ素樹脂が革の繊維に乗っているような状態になるため、効果があまり長く続かない点です。このため、革製品にはフッ素系スプレーを使用し、雨の日には毎回(もしくは週2~3回)スプレーを噴霧する必要があります。
出典「雨の日を快適に。防水スプレーお手入れ特集 」
このように、革製品との相性が良いフッ素系スプレーですが、デメリットとして効果が持続しない点が挙げられます。雨の日は毎回スプレーで防水対策しましょう。
おすすめの防水スプレー
Collonil「1909シュプリーム プロテクトスプレー」
今回の検証では、HAWKINSの防水スプレーを使用しましたが、Colonilの「1909シュプリーム プロテクトスプレー」もフッ素系なので革小物との相性がよくおすすめです。また、保革成分としてシダーウッドオイルを配合しているので、栄養も同時に与えてくれます。
防水スプレーの使い方
- ブラシで汚れを落とす
- 20cmほどの距離から革の表面が均一に軽く濡れる程度にスプレー
- 15分ほど乾燥させる(完全に乾燥させるとより効果的)
ワセリンVS防水スプレー検証
①左側にワセリン、右側に防水スプレーを塗布
ワセリンと防水スプレーをそれぞれ塗布した状態は上の画像のようになりました。
色は、ワセリンを塗布した革の表面が濃くなり、防水スプレーを塗布した革はほぼ元の色を保っています。
塗布して5分ほど乾燥させた後の質感は、ワセリン側は保湿剤なのでかなりしっとりして柔らかくなり、防水スプレーはさらさらとしていてほぼ素材そのままの触り心地でした。
革の質感や色味を保ちたいという方には、防水スプレーが良さそうです。
②水をスプレーして、時間経過を観察
5分後
10分後
20分後
「牛革 栃木レザー VONO ANILINE」変化
「牛革 栃木レザー VONO ANILINE」のワセリン側で終始水シミが一部で目立ちましたが、防水できている箇所もありました。
それ以外の3つ革「牛革 Molis ベジタブルタンニンレザー 」「馬革 LEAP ブエブロレザー」「牛革 プルアップレザー」のワセリン側には、少し水シミができたものの意外とワセリンと防水スプレーに違いはありませんでした。
このように、ワセリンは防水スプレーの代用品として防水効果が期待できそうです。
しかし、革製品に対して使用することを想定して作られていないため、あくまで代用品として使用することをおすすめします。
12時間後
そして、水滴をそのままにして12間後の様子は画像のとおりでした。
右:ワセリンも左:防水スプレーも目立つ水シミは残ってはいませんでした。ただ、ワセリンには、薄く白い水滴の跡が残っていましたが、手で擦ると消えました。
水シミができていた革は、味として使っていこうと覚悟していたものの意外と表面は綺麗なままでした。
今回は検証で水滴をそのままにしていましたが、水滴がついたらすぐに拭き取りましょう。革は水分を吸うと、繊維が硬くなり型崩れをおこしやすくやすくなります。
雨などの水に塗れてしまった際には、乾いたタオルで水気を取り除き、風通しの良い場所で陰干することをおすすめします。
検証まとめ
今回は、「防水スプレーVSワセリン!ワセリンは防水スプレーの代用品として使えるのか?」を4種類の革を使って検証しましたが、いかがでしたでしょうか。
検証結果から防水スプレーがない時の代用品として、ワセリンは使えそうです。しかし、あくまで代用品のため、防水スプレーでの防水を推奨します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
使用したアイテム一覧
①牛革 栃木レザー VONO ANILINE 「Moldi」
②牛革 ベジタブルタンニンレザー VTペンケース Mサイズ
③馬革 ブエブロレザー L字コインケース
④牛革 プルアップレザー 「TIDY2.0」